ベルリン
(付録)ベルリンの観客【2004年2月10日】
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ベルリンの映画館:バビロン(夜)
ベルリンの歴史ある映画館バビロン(ローザルクセンブルク広場付近)

 ベルリン国際映画祭が始まると、会場の映画館にはベルリンの映画好き、にわか批評家たちが押し掛ける。多数の映画館を擁するこの街だが、普段はそれほど混まない映画館も、この期間ばかりはほとんどの席が埋まり、満員御礼ということもよく起こる。チケットは、基本的に立ち見を許さないのか、席の分だけ売れれば、それ以上は発券しないようだ。
 そうやって集まったベルリン人を中心とする観客だが、日本の観客と比べるとおよそ異なったところがある。何よりも鑑賞時の行儀の悪さ。面白くないと思えば平気で出て行く。そして寝る。それも鼾を響かせて。ひどいものに至っては、ホラー映画で笑うということも起こる。


 去年だったか日本から『深き水の底から』という日本のホラー映画が出展されたが、大声で周りに聞いてくれとばかりに笑う観客がいたのには驚かされた。ドイツ人には、日本の湿度、老朽化した集合住宅の不気味さといった背景が理解できずにどこが怖いのかといって笑うのか、あるいは本当は怖いのだがそれを悟られまいとして笑うのか、さもなければ文化的なコードの違いから本当におかしくて笑うのか。理由はどうあれ、映画の「ホラー」を楽しみにしていった観客は、雰囲気をぶちこわされてしまうわけで、私は不快に思っていた。
 日本人では、まずこういうことはないだろう。つまらなくて思わず寝てしまうということはあるかもしれないが、作品への敬意があるわけではなくても、満員の映画館から続々と出ていくということは、周りの迷惑を考えればできないだろう。ましてやホラー映画でこれ見よがしに笑うことなど。
 また日本人は自分が興味を持てない、面白くないと思ったところで、それは理解できない自分に非があるのではないかとまず思うのではないだろうか。またおかしいところでおかしくない、怖いところで怖くない等は、自分の無知が原因だと思い、あえて自分の感覚を表には出さない傾向もあるだろう。こういう謙虚な日本人は、なんとか理解しようと一生懸命に観る。これが日本人の「お行儀の良さ」の原因となっていることは間違いない。
 しかしこういうお行儀の良さは、映画を作り、それを競技にかけようというような場、国際映画祭のような場では、かえって厄介なお客ではないだろうか。その地域で受けるかどうか、あるいはグローバルスタンダードにかなっているかという基準から作品への反応を見ようというときに、作品への敬意なり、周囲への気遣いから、自分の正直な感想を外に出さないという観客は、医者にどこが痛いか尋ねられても痛くはないと我慢してしまうような患者だろう。
 ベルリンのように、失礼ではあるが正直な観客が、映画祭を育てるのかもしれない。【長嶋】



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