ドイツ
岐路に立つ大学−エリート大学構想 【2004年3月12日】
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「世界に冠たるドイツの大学」。1810年、プロイセン王国の近代化を図る大改革の中、新しい理念に基づいてベルリン大学が創られた。その理念と制度は近代大学の模範として世界中の大学で採用された。19世紀の後半にできた日本の大学制度もドイツのそれがモデルとなった。19世紀末、ドイツの大学と研究が世界トップレベルにあったということは間違いない。


 それから月日は流れ、ベルリン大学が創設されて200年近い歳月が経過したわけだが、近代大学発祥の地ともいえるベルリンは現在、4つの総合大学、ドイツ語でUniversität(ウニベルジテート)を持つことになった。ベルリン大学に起源を持つフンボルト大学(HU)とベルリン自由大学(FU)、戦後に専門大学(高等専門学校)から総合大学となったベルリン工科総合大学(TU)、そして今世紀になって総合大学となった芸術総合大学(UdK)。
 4つもの総合大学を持つ都市はドイツでも他に例がないが、これが学問の花咲くドイツの首都の証左だと思ったら大きな間違いだろう。ただでさえ財政難にあるベルリンが4つもの総合大学を養うのは至難の業。大学予算削減のあおりで講座数が減り、学部の中には学生を卒業させるのに必要な授業を何年も開講できないケースまで出てきた。学生は、それでも卒業したいと思えば、何年先に開講されるともわからない授業をじっと待つか、さもなければ他の都市にある他の大学に出向いて必要な単位を取らなくてはならない。日本では信じがたい話だが事実なのだ。
 またアメリカやイギリスのように必要な専門知識を集中的に詰め込むといったビジネススクールやロースクールのような制度のないドイツの大学では、学生が卒業するまでに要する長い時間も問題になっている。男子学生の場合、兵役を終えて大学に入り、単位を取得して研修(プラクティクム)を終えれば、もう30歳になんなんとするというのも珍しいことではない。これではスピードの時代に、世界から取り残されてしまう。
 行政、社会・経済、そして大学自身の中にも危機感はあるが、近代大学の模範たるドイツの大学、そう簡単には変わらない。200年の重みは確かにある。それでも変革しようと思えば、その方策は大学の中に特権的なコースを設置するということだろうか。名付けて「エリートコース (Elitestudiengang)」。何とも露骨な名称だが、連邦首相シュレーダーも同様のことを口にしたことがある。新聞報道によればバイエルン州は、この秋より10のコース、5つの国際博士課程、300人の学生でエリートコースを設置するとのことだ。これはドイツの州としては初めての試み。費用は1400万ユーロに上る。さすがは金持ちのバイエルン州。
 しかしベルリンは、そんなことができるほど財政は豊かではないし、できたとしても4つの総合大学のどこに設置するかで紛糾することは目に見えている。4人の妻を持ったら全員を平等に愛さなくてはいけないのだ。ではどうするのか。ベルリンは私立大学の誘致でエリート大学の創設を目指すことになった。その大学こそ、「ユーロピアン・スクール・オブ・マネージメント&テクノロジー(European School of Management and Technology (ESMT))」。ドイツに英語名の大学とは恐れ入るが、アリアンツ、ダイムラクライスラ、テュッセンクルップ、ドイツテレコム、ドイツ銀行といった名だたる大企業を含む25団体からなる財団が運営にあたる。ベルリンは、この財団に旧東独の国家評議会が使用していた建物を、65年間にわたって無償で提供ことになり、3月4日市長より建物の鍵が財団に手渡された。財団は2380万ユーロ相当のこの不動産を、3500万ユーロをかけて大学の本部に改修し、2006年の開講を目指すという。
 4人の妻を愛せなければ1人と浮気ということか。4人の嫉妬はいかばかりか。【長嶋】

参考リンク
ESMTホームページ:http://www.esmt.org



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