ベルリン
検札にご用心【2004年4月12日】

 ベルリンの地下鉄や市内電車(Sバーン)に日本のような改札口はない。切符を買って入鋏代わりのスタンプ機で刻印を入れれば、ホームにも車内にも入れる。だれが見張っているわけでもないので、その気になれば切符を持たずに乗車することもできる。
 そういう不正乗車を防止するために抜き打ちで車内検札が行われる。そのときに有効な乗車券を持っていなければ高額の罰金が科される。当然のことだろう。しかしこのシステムの運用にあたって、最近、利用者の不満が高まっている。私もその一人になった。
 先日のこと、私が地下鉄に乗っていると検札が来た。私は定期を持っているので何も恐れることはなくそれを見せる。するとそれだけでは不十分で身分証明書を見せろとの要求。確かに切符には身分証明書を携帯するようにと書かれている。身分証明書と言っても外国人にはそれに代わるパスポートしかない。かさばり紛失の危険のあるものをいつも持っているわけにはいかない。仕方なく私は以前作った市内交通機関の利用者登録証を見せる。そこには写真もはられている。本人の確認には十分なはずだし、これまでもそれで十分だった。しかし今回ばかりは、どうしても身分証明書を見せろと執拗に求める。結局、私は不正乗車扱いにされしまった。確かに私が悪いといえば悪いのだが、こんなことははじめての経験だ。
 中東欧の国では、外国人観光客、特に日本人を見れば、何かとケチをつけて高額の罰金を要求するという半ば恐喝まがいの行為もままあると聞いている。私の知人にも観光客として訪問していたプラハで、不快な目にあったという者がいる。しかしそういうのは秩序が不安定な中東欧のことばかりかと考えていた。今回の私の経験もそれと同様のものなのか。
 そういえば、ベルリンに住む友人がやはりベルリンの検札で横暴と思われる行為の「被害」にあっていたのを思いだす。その友人も不正乗車などするつもりはなく正規の乗車券を購入していたのにも関わらず、「不正」を指摘された。不正の根拠とされたのが、スタンプの位置。間違った位置にスタンプを押してしまった友人は、正しいところに入れ直した。したがって二重にスタンプが押されたことになるのだが、それでもスタンプには押された時刻が刻印されるので、二つのスタンプを見れば不正乗車をしようとしたものでないことは明らかだ。切符は2時間有効だが、どちらの刻印時刻を基準にしても有効だった。
 その友人はそのことを説明したが、検札係は頑として認めず、不正乗車の証拠とした二重スタンプの切符を近くのゴミ箱に捨てるようにと指示したという。何か変だと感じた友人は、その捨てた切符を拾い、翌日罰金を払いに顧客センターに行った際にその切符を以て説明し、不正乗車でなかったことが認められた。当然といえば当然だ。
 こんなベルリン公共交通の検札係の「横暴」とも呼べる行為が最近増えて来ており、新聞紙上でも取り上げられたということ。原因として、数年前から検札がアウトソーシングされ、そこでは検挙の歩合で検札係が報酬を受けていると噂されている。そんなこともありそうだ。
 そんな横暴の「被害」に遭わないためには、杓子定規に規則を守るしかないのだが、もし強引に不正乗車であるとされたときには、その検札係の登録証の提示を要求し氏名などを控えておくといいだろう。そして冷静に苦情を、しかるべきところに文書で提出する。私の友人のケースのように不正でないことが認められることもある。常識が通じるところはまだ救いといえるが、法治国家の首都の公共交通機関がこんなこととは情けない。【長嶋】

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フリーランスのリサーチャー、翻訳者、通訳者
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