ベルリン
クリスマスツリーと近所付き合い【2004年12月6日】

 11月、ベルリンを離れ日本に戻っていた。12月にベルリンに戻ると季節はすっかり冬へと変わっている。
 ベルリンに戻った翌日の朝、私の住むアパートの管理人が部屋のベルを鳴らした。さては留守中に何かあったのか。ドアを開けて管理人の話を聞くと中庭にクリスマスツリーを飾りたいので、アパートの住人に寄付を求めているということだった。
 初めてのことだったが、寄付は出すことにした。いくら出せば良いのかと管理人に尋ねると、いくらでもよいが、皆2〜5ユーロ出しているということだった。キリスト教徒でもない異邦人がクリスマスツリーのために?とも思ったが、宗教よりも近所付き合いなのだろう。
 ベルリンも大都会。ドイツ中、いやヨーロッパ中、場合によっては世界中から人間が集まる。東京と同じで昔ながらの近所付き合いといったものはなく、隣は何をする人ぞ、ということも珍しくはない。しかしそれでも日本の都会に比べるとベルリンには、まだまだ人間的な隣人関係が残っているように感じることがある。特に同じ建物の住む人間同士は。
 玄関ホール、通路、中庭、階段、建物の中で合えば挨拶くらいは必ず交わす。中庭を囲んで生活していると、自然と淡い仲間意識のようなものは芽生える。中庭におかれたゴミ箱を共同で利用し、場合によっては電気、水道や暖房費も建物全体で支払い、部屋数で割ることもある。そういうところでは無駄な電気を使っている家があれば、隣人や管理人が注意することもある。余計なお世話ではなく、アパートは建物全体が支払い共同体でもあるのだから、当然と言えば当然だ。経済的な関係だけが結びつけているわけではないが、利害関係から隣人関係も生まれる。これが近所付き合いの源。
 ヨーロッパの都会を上から見るとロの字型に作られた建物が多いのに気づく。そのロの字の数だけ、こんな共同体があると言ってもよいだろう。同じ空を共有する住人は部分的にしろ経済を共有し、隣人との付き合いもできる。中庭におかれたクリスマスツリーは、その表象でもあるのだ。

 残念ながら、現在ではロの字型に建物を造ることは禁じられている。【長嶋】


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フリーランスのリサーチャー、翻訳者、通訳者
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