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ベルリンの水(ベルリン上下水道公社) 【2005年9月28日】

「ベルリンの水」
 ここで紹介するのは「ベルリンの水」。といってもドイツ名水百泉などというものではない。ただの水道水なのだが、その品質は非常に高くドイツでもトップクラスに位置づけられるという。
浄水場の歴史的建造物

水道水の品質
 しかし南ドイツの水道水のうまさを知っている人には、ベルリンの水道水がドイツでトップクラスだと言ったら笑われるだろう。ベルリンの水は石灰分の多い硬水で、味の点ではお世辞にも「高品質」とは言えない。北ヨーロッパでは、アルプスなど山地に近い南部の方がうまい水の産地で、有名なミネラルウォーターの源泉はその地方に集中している。
 だが「水道水」には、水道水の評価基準がある。サイトの説明によると飲料水や料理に使えることはもちろんのこと、乳児に与えることができるほど安全で清浄だとのこと(www.bwb.de/deutsch/trinkwasser/wasserversorgung_berlins.html)。トップクラスだという根拠は、ドイツのテレビ番組雑誌HOR ZUが実施した水道水テストで、化学物質の検出を基準として4万人以上の住民に水を供給する270都市の水道水を評価したところ、ベルリンの水道水は「良プラス」だったということだ。その上の格付け「とても良い」はバーデン-バーデン、バイロイト、エアランゲン、ノイシュタット・アン・デア・ヴァインシュトラーセの4都市だけで、いずれも中小の都市で、ベルリンのような大工業都市ではない。ベルリン水道公社のサイトでは、ミネラルウォーターとの比較も憚らないと言っているが、それは宣伝が過ぎるというものだろう。
 そのような高品質の水をつくる浄水技術を視察しようと、そして最近では民営化研究の事例にしようと、日本からも毎年何組もの視察団が浄水の現場を訪れる。筆者も、そのような視察団の通訳として、2005年8月ベルリンの浄水場の一つベーリッツホーフ (Beelitzhof) 浄水場を訪問した。そのときの様子を交えてベルリンの浄水システムの特徴を報告したい。

技術の問題か?
 まず驚かされるのが浄水技術。高品質の水道水を供給するからには、よほどの技術、ハイテクがあろうかと考えるのが自然だろう。しかし実際に行って話を聞いてみると、浄水技術に関しては全く予想を裏切られる。
 浄水のプロセスはというと、まず地下からくみ上げられた水は、空気に曝し、硬度を調節する。その後、砂、礫の高速フィルターを通して、不純物を濾しとる。これで水道水の出来上がり。その後、必要があれば消毒、殺菌用に化学物質を加えることは技術上可能で、そのための施設も用意されてはいるが、非常時以外には使われない。このように塩素等の化学物質を加えないということが、乳児にとっても安全な水という根拠なのだろう。
 実に単純な浄水技術だ。案内役の浄水所スタッフの口からも、「我々はプリミティーフ(原始的)な方法で」との説明が何度もあった。そして、彼はそれを誇りにしてように感じられた。

浄水場外での努力
水源保護地域の道路標識
 このような原始的な方法での浄水が可能になるのは、汚染されていない水源がベルリンの地下に潤沢に存在しているからなのだが、ただ自然と地理的な偶然に任せておいたのでは、水源はすぐに汚染されるか、枯渇して、地盤沈下などの問題が発生してしまう。
 どのような対策が講じられているかというと、水道水の水源を確保するために、ベルリンの面積のほぼ25%が水源保護地域に指定されている他、地下水のくみ上げによって地盤沈下が発生しないように、地下水を人工的に作り出す努力も行われている。そのためには、徹底した下水処理はもちろんのこと、表層水を浄化して自然の湖沼に流すなど、地道な努力が行われている。地下水位については、ベルリン全体の地下水位が各所に設置された測定装置とコンピューターにより計測、観察されている。
市民の憩いの湖
シュラハテンゼー
 浄化された表層水が流し込まれた湖沼は、水質が向上し、市民に憩いの場を提供するが、そこから地中に染み込んだ水は長い年月をかけて再びベルリンの水道網へと帰ってくる。写真はベルリン西南部に位置するシュラハテンゼー湖 (Schlachtensee) だが、週末ともなると沢山の市民が訪れる。散歩やジョギング、夏にはボート遊びや水浴を楽しむ人も多い。水は、湖岸では湖底が透けて見えるほど澄んでおり、水鳥や魚を良く目にする。

 ベルリンの水道事業には、ただ飲料水を作るだけでなく、使った水を処理し、自然に返すという環境配慮や循環のコンセプトがあり、これこそがベルリンの「原始的な浄水方法」を支えている。そして浄水場のスタッフが、「原始的な浄水方法」を誇るのも、ここに理由があるのだろう。  このような自然の循環を利用した浄水コンセプトはベルリンに限らず、ドイツでは一般的なのだが、ベルリンは大工業都市でありながら、コンセプトを成功させている事例と言って良いだろう。【長嶋】

参考:
ベルリン上下水道公社 (Berliner Wasserbetrieb (BWB)):www.bwb.de

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