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非常入口 (Noteingang) 【2005年11月14日】

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バスに貼られたステッカー 「非常入口」ステッカー
 「非常口」と言えば「出口」と相場が決まっているが、ベルリンを走るバスの入り口近くに貼られたオレンジ色のステッカーには"Noteingang"、つまり「非常入口」と書かれている。これが書き間違いやいたずらではないことは、その下に小さく書かれた説明を読むと分かる。そこにはドイツ語、英語、トルコ語、フランス語で「私たちは、人種差別的侵害に対する保護を提供します」と書かれている。人種差別による迫害、暴力に遭遇した人は、ここへ逃げ込んで下さいという意味なのだ。
 ベルリン市交通公社 (BVG) の車両(バス、路面電車)や施設にこのステッカーが貼られるようになったのは、2001年1月以降のことだが、それはBVGが前年11月に開始された「ベルリン非常入口キャンペーン」に参加したことによる。このような運動は、もともとはベルリンのベルナウ地区 (Bernau) の青年たちによって1998年に始められたもので、2000年9月にはアーヘン平和賞 (Aachener Friedenspreis) が授与された。


 ドイツと言えば、戦後の脱ナチズム教育や、ユダヤ人をはじめとする人種政策の被害者への補償により、ファシズムの暴虐や侵略戦争の贖罪の模範とされることが多い。しかし一部には人種差別的偏見、さらにはそのような思想的背景から外国人を暴力によって迫害しようとするグループが未だに存在するのも事実。だがこの点でドイツがナチズムからの脱却が不十分だと批判するだけだとしたら、それは安直に過ぎる。私が評価したいのはむしろ、ドイツが戦後の国是として来たナチズムからの脱却(その中には人種差別の解消を含む)が未だ不十分、あるいはネオナチのような思想が新たに発生していることを隠蔽するのではなく、市民的レベルでそれへの対抗措置、「非常入口」を設けたということだ。
 どんなシステムも完璧で無誤謬ということはあり得ない。完璧に見えても欠陥もあるだろうし、故障だって発生する。そのような場合にも、小さな欠陥がシステム全体を崩壊させてしまう前に緊急措置をとる。「非常入口 (Noteingang)」には、そんな「フェール・セーフ」の考え方があるように感じられる。

 暗く人通りも乏しい夜道で、外国人であるが故の不安を感じたとき、停留所のバスや駅にこのオレンジ色のステッカーが貼られていたら、外国人にはどんなにか心強いだろう。もちろんそれで万全というわけでないのは分かっているが、不安の波に翻弄される小舟には彼方にまたたく灯台の明かりでもあり難いものだ。【長嶋】

参考
ベルリン非常入口キャンペーン:www.kampagne-noteingang-berlin.de
新聞記事:Berliner Zeitung(2001年1月11日)

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