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ベルリン新中央駅オープン、そして・・ 【2006年6月6日】

 Drehscheibe(ドレーシャイベ)、文字通り訳すと「回転する板」という意味のドイツ語。大きな鉄道駅や大空港を表現するときによく使われる単語で、辞書には「回転盤」、「転車台(ターンテーブル)」、「ろくろ」といった訳語が載っている。確かにその通りなのだが、この単語、結構翻訳者泣かせ。鉄道駅のたとえとしては「転車台」、「ターンテーブル」なんて良さそうだが、そう訳して納得してくれるのは鉄道ファンくらいだろう。
 「ターンテーブル/転車台」というのは、その昔「(蒸気)機関車」に前と後ろが決まっていて、多くの機関車が後ろ向きに走るのを得意としなかった時代、終点に着いた機関車をぐるっと回して反対方向に走れるようにしたり、車庫に入れたりするのに使った機械のこと。今では都会の敷地の狭いスカイパーキングで自動車用のそれをよく見かけるが、駅を指して「ターンテーブル」と表現することは、日本語ではまずない。「ベルリンに、ドイツ鉄道の新しいターンテーブル完成」などと書くと、駅の構内にドイツ鉄道直営の中華料理屋でもオープンしたのかと思われかねない。
 ある方向から来たものを、いろいろな方向に向ける機能が「ドレーシャイベ」。翻訳者としては、鉄道駅の「ドレーシャイベ」なら「乗換駅」とするか、ちょっと文語的になるが「要衝」、空港なら「ハブ」なんて表現して妥協するしかない。


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ベルリン新中央駅地下ホーム
 前置きが長くなったが、2006年5月末、サッカー・ワールドカップ・ドイツ大会を前にベルリンに鉄道の新「ドレーシャイベ」が登場した。これまでレアーター駅と呼ばれていたベルリン電車線網の一駅が、「ベルリン中央駅」に生まれ変わったのだ。オープン時の様子や、通り魔事件のことは日本でもすでに報道されたことだろう。
 地上には東西方向に市内電車2線、長距離・ローカル線用ホーム4線、地下には南北方向に長距離・ローカル線用ホーム8線が入り、東西南北が十字に交差し、まさに「ドレーシャイベ」と呼ぶにふさわしい駅となった。今後地下鉄も乗り入れ、駅前のバスターミナルも整備されることになっている。
 日本の大ターミナル駅なら、駅を出ればすぐに商業中心街やオフィス街が始まるが、ベルリンの場合は駅周辺の整備ができていない。その代わり駅の構内には、服飾や飲食関連のショップが多数入居しており、駅構内は大ショッピングモールとなっている。改札口のないドイツの駅では、駅と駅ビル・デパートとが分離されることなく、駅とモールが完全に一体となっている。

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ベルリン・ツォー駅
 一方この華々しい新駅オープンの陰で、西ベルリンの事実上の中央駅として機能してきた駅が、その役割を新駅に譲り渡しひっそりと一ローカル駅に戻った。「ベルリン・ツォー」と呼ばれる駅がそれだ。かつての西ドイツから鉄道で西ベルリンに到着した旅行者、そして西ベルリン市民にベルリンのターミナルとして親しまれてきた「動物園(ツォー)駅」は、新中央駅の開業と同時に、ICE(新幹線列車)はもちろんのこと、夜行列車以外ほとんどの長距離列車は停車しない静かな駅に変わった。確かに統一後は、中欧の世界都市の玄関としては小さ過ぎる駅ではあったが、私を含め、ここをベルリンへの入口と認識していた者にとっては寂しい限りだ。
 ヴィルヘルム記念教会の壊れた屋根を車窓に見て、風向きと気温によっては爽快とは言えない動物園の香りをベルリナールフト(ベルリンの空気)として嗅ぎ、酔っぱらいや物乞いの姿にベルリンの雰囲気を感じ取っていた者には、ここに長距離列車が停車せず、したがって長旅から帰っても慣れ親しんだ散らかった玄関から家に入れないというのは何となく寂しい感じがする。
 新ベルリン中央駅の地下ホームに列車が入るとなれば、ランドマークも目に入らずにベルリンに到着する可能性がある。そのうちこの新駅にも人間の匂いが染み込んで行くことだろうが、未来的で、テレビアニメで見た銀河鉄道の駅のような新中央駅をベルリンへの入口と認識できるようになるまで、しばらく時間がかかりそうだ。【長嶋】

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【関連記事】
新しいベルリン中央駅
ベルリンの人々(2006年5月27日)」(ベルリン対話工房)
Der neue Berliner Hauptbahnhof: Drehscheibe Europas(ベルリン新中央駅:ヨーロッパ鉄道交通の要衝)」(ドイツ政府オンライン、2006年5月26日)


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