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ランゲマルクホール (Langemarckhalle) 【2006年7月18日】

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ランゲマルクホールとグロッケントゥルム(鐘楼)
 ベルリン西部、2006年のW杯の会場ともなったオリンビアシュタディオン(オリンピックスタジアム)を中核とした広大なスポーツ施設は、ナチスドイツが1936年のベルリンオリンピック開催のために整備させた帝国スポーツ場 (Reichssportsfeld) がその起源。ここに紹介するランゲマルク - ホールはその西の端、グロッケントゥルム(鐘楼)の土台部分に位置する記念碑。  このホールの名前の由来である「ランゲマルク (Langemarck)」とは、ベルギーの地名で第一次大戦時に戦場となった場所。1914年11月10日ないし11日、ランゲマルクの西方で、若い志願兵を主体とする実戦経験に乏しい部隊が、「ドイツ、世界に冠たるドイツ」と、後のドイツ国歌の一節を歌いながら敵に突撃し多くの命が失われた、と伝えられる場所。この地はイープルにも近く、戦線が膠着する中、激しい戦闘が行われ多くの兵士が命を落としたのは事実なのだが、この地で、この日に、歌いながら突進、というのは第一次大戦後に伝説化されたもの。つまり事実と一致しない「記憶」が醸造された、とみなされている。
 この「ランゲマルクの伝説」は、国家のために死をも厭わない自己犠牲の精神としてナチスによって利用された。帝国スポーツ場にこのホールが設置されたのもその一環なのだが、1936年8月1日にはオリンピック開催に際してヒトラーが黙祷を捧げており、国家のために命を投げ出した英雄たちの活躍とオリンピック競技での各国、特にドイツの代表選手の戦いを二重写しにしようとする演出が読み取れる。

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ホール内部
 ランゲマルク - ホールには12本の柱があり、そこにはかつてはランゲマルクの戦いに参加した76の連隊の旗が掲げられていた。またかつて鐘楼に掲げられていた師団、部隊の名前が刻まれたプレートは現在ではホールの東側の壁に掲げられている。南北の壁面には二人の詩人、フリードリヒ・ヘルダーリン (Friedrich Hölderlin)(1770 - 1843)とヴァルター・フレクス (Walter Flex)(1887 - 1917)の作品の一節が刻まれているが、前者のものはフランス革命に対するもの。二人の詩人の生没年は、戦後1960年代に刻まれたものだが、ヘルダーリンの言葉が「ランゲマルクの伝説」を歌ったものでないことを示すための配慮だろう。

 ホールの上にそびえる鐘楼は1947年にイギリス軍により爆破されたが、第二次大戦後の1949年、オリンピアシュタディオンはイギリス軍の手から再びベルリン市の管轄に移り、1963年には鐘楼の再建を含めて復元が完了した。ホールの修復は1960 - 62年に行われたが、祭壇と1943 - 1945年に帝国スポーツ指導者ハンス・フォン・チャンマー (Hans von Tschammer)の骨壺は撤去された。彼は1943年3月25日にスターリングラードの戦いの末期に狭心症で死去し、国葬された後に5月2日にその骨壺がホールに埋められていた。

 オリンピアシュタディオンは2004年に再度の改修が終了し、2006年にはサッカー・ワールドカップ・ドイツ大会の会場の一つとなった。日本も含め各国代表チームによる戦いは、世界を熱狂させた。暴徒化したサポーターによる騒ぎも皆無ではなかったが、かなりの成果を収めた大会になったのは事実だろう。
 大会中、愛国心やナショナリズムについて取り沙汰されることもあったが、自分の国の代表チームを応援したからといって、それがそのまま「敵国」への反感や、外国人の排斥、戦争に「国民」を駆り立てるわけではない。しかしスポーツ観戦の熱狂が国家の手によって巧妙に利用されるとき、観客である「国民」が戦争に動員されることだってある。この記念碑は、そんなことを物語っているようだ。
 かつてのナショナリズムの「神殿」は、今は戒めのモニュメントとなっている。

 ホールには、ランゲマルクの「神話」の発生からナチスによる利用についての展示が併設されている他、エレベーターで地上77メートルの塔の上まで上れる。塔の上からはベルリン市街や周囲の森を一望できるが、高いところに恐怖を覚える人は覚悟が必要。【長嶋】

行き方:
 ランゲマルク - ホールとグロッケントゥルム(鐘楼)へは、市の中心部からはシュパンダウ (Spandau) 行きのSバーンで、ピヒェルスベルク (Pichersberg) 駅まで行き、駅からは徒歩5分。

リンク:
オリンピックスタジアムのグロッケントゥルム(鐘楼)
www.glockenturm.de

参考文献:
Karl Unruh, Langemarck - Legende und Wirklichkeit, Koblenz 1986 (3. Aufl. Bonn 1997).(カール・ウンルー『ランゲマルク - 伝説と現実』)


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