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「携帯電話車両」にご用心! 【2006年11月6日】

 日本の生活とドイツのそれとの大きな違いとして、自由に使える空間の大きさの差がある、というようなことを以前どこかで書いたと記憶している。もちろん日本では狭くてドイツは広い。この違いは、日本人とドイツ人の行動様式、ものの考え方に大きな影響を与えている。
 例えば携帯電話のマナーもその一つ。日本の都市生活とくに公共交通機関の車内では携帯電話の利用、とくに音声を使った通信は控えるのが常識。「車内では携帯電話の電源を切るか、マナーモードにして・・」とは日本で電車に乗る度に聞かれるアナウンスだ。このアナウンスの方こそいちいちうるさいと思う方もいるだろうが、携帯電話が普及して誰もが頻繁に使うようになった今日、日本の混雑した車内で皆が携帯電話を自由に使っていたら市民生活の安寧を乱すほどに騒々しくなるということは容易に予想がつく。


 ところ変わってドイツではどうか。各都市交通局の運送約款をじっくり隅々まで読めばどこかに車内での携帯電話の使用を控えることと書いてあるかもしれないが、ベルリンの日常では、車内アナウンスに携帯電話の使用を云々、というものはないし、電車、地下鉄、バスでも皆遠慮なく使っている。そして日本の都会のようなぎゅうぎゅう詰めの電車というのも、サッカー試合後のスタジアム帰りの電車でもない限りおこらないので、同乗者の携帯電話の利用で目くじらを立てるものもまずいない。自由に使える空間の広さ故のことだろう。携帯電話があまり好きではない私も、車内で携帯電話に大声で話している人がいても、ドイツでなら何とも思わなかった。
 ところが先日、デュッセルドルフからベルリンまで特急列車 ICE(インターシティーエキスプレス)を利用したときのこと、車内で使われる携帯電話で不快な、というよりは辛い思いをした。ICE とはドイツの新幹線列車、デュッセルドルフ - ベルリン路線と言えば、ビジネス客が多く使う区間。日本ならさしずめ東海道新幹線、東京 - 大阪といったところだろうか。
 13時過ぎにデュッセル空港長距離列車駅を出発した列車はほぼ満席で、空いている席は数えるほどしかなく、それもたいていは予約が入っていた(ドイツの列車の指定席は席ごとに表示され、指定席車両というのはない)。大きな荷物があった私は、込み合うことを予想して座席を予約しておいたので席を得るのに困難はなかった。日本からの長旅の途中であり、ベルリンまで車窓を眺めながらうとうとしようかと思っていたのだった。
DB列車編成表
列車の編成表(ベルリン中央駅)
「静寂車両」の表示はまだない。
 駅を出て数分経ちうとうととしかけたころ、隣に座っていた同乗者の携帯電話が着信の音楽を奏で始めた。3週間ばかりの帰国で日本に順応しかけていたのか、旅の疲れからなのかやや不快な気分になった。しかし自分が眠ろうとするのを妨げられたからといっていちいち目くじらを立てていたら、そちらの方がマナー違反というもの。ドイツに帰ってきたんだと実感して気分を落ちつける。しばらくして隣人の通話が終わり静かになる。やれやれと再び居眠りを再開しようとしたところが数分後にはまた着信音。ベルリン到着まで、こういうことが何度なく繰り返されたが、隣に座った人だけではなく、対面の席、後ろの席、通路を挟んで隣の席と・・。中には携帯電話中毒かと思うくらい頻繁に発信、着信を繰り返すものもいる。周囲への遠慮なんてない。ビジネス路線で絶えずコンタクトをとりたい乗客が多かったためだろうが、車内はコールセンターのオフィスかというようにあちこちで携帯電話での通話が氾濫。日本なら、マナーモードに切り替えた電話機が振動しだせば、受けた側はデッキに急ぐのだろうが、電車で携帯電話を控えるという習慣がないドイツでは遠慮するものはなく、私はずっと通話の騒音に悩まされ続けた。
 喫煙車で間接喫煙に悩まされるのも辛いが、今回は、周りの自分と無関係なコミュニケーションの騒音に悩まされるのもまた辛いものだとわかった。ベルリンが近づいてきた頃、テーブルに置かれていた列車の編成表にふと目をやると、禁煙車と並んで「静寂車 (Ruhezone)」のマークがあるのを見つけた。後で調べてみると予約の際それをリクエストすることはできるのがわかった。ただし禁煙/喫煙の選択では禁煙が初期設定になっているのとは違って、携帯電話の使用についてはどちらでも構わないという設定になっており、偶然携帯電話車の席があてがわれることもある。
 移動の時間を睡眠や読書、景色を眺めたり瞑想したりしたい旅行者は、静寂車を選んだ方が精神衛生には良いようだ。最近、技術的改良により飛行機の中での携帯電話の使用が可能になりつつあるようだが、私としては引き続き飛行中の携帯電話全面禁止を願わずにはいられない。【長嶋】

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