ドイツ
このページでは、ドイツに関連する話題・情報を発信します。マクロな視点からドイツならではの話題を選んでいます。
milagek.jpg 里程標 里程標(マイルストーン)
(2003年8月23日)

 「鉄道により空間が機械化された」、どこで読んだかは覚えていないが、印象的な表現として記憶に残っている。鉄道の発明、発展によって、空間は時間という物差しで表現できるようになった。リバプール−マンチェスター間、xx時間yy分。分単位までの精度を実現するのに、発明からさほど時間はかからなかっただろう。歯車が回るように、人も物も、そして情報までもが運ばれてくる。


 この正確さは、確かに「革命」の名にふさわしい。しかしそのように空間を時間で把握しようとする試みは、産業革命・工業化時代以前にも存在した。左の写真は旧ザクセン領リュッベン(ニーダーラウジッツ)に残る里程標で、1735年に建立されたもの。よく見ると主要都市までの所要時間が書かれている。ドレスデンまで26と1/4時間、プラハまで58と3/8時間。経験値によるものなのか、あるいは距離をもとに時間を計算したのかは定かでないが、かなり細かく書かれている。郵便馬車の平均所要時間くらいに考えた方が良いのだろうが、空間の近代化の準備はすでに整っていた。ニーダーラウジッツは自然の豊かな地域だが、ザクセン地方は、ライン地方と並ぶドイツ産業革命の中心地だったところ。東西ドイツ統一後のザクセン州政府は、マニュファクチャリングの伝統を背景に、州内への工場誘致に余念がない。日本からもデンソー、タカタといった企業がすでに進出している。
 西ドイツへのキャッチアップの里程標は、どれほど出来ていることだろうか。

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ベルリン・シャルロッテンブルク地区税務署。ナチ様式と思われる高圧的な建物は、監視効果抜群?
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市販の税務申告書作成・節税指南書。細かい文字で600ページ。複雑な税制は、節税を諦めさせるのに効果抜群?
減税の前に制度の簡素化を
(2003年7月22日)

 ドイツ連邦政府与党(社民党、緑の党)は、「大幅」減税を主体とした構想に掲げ、改革に着手しようとしている。長引く景気低迷、400万人を超える失業者、社会国家を維持する財政負担。ドイツが改革を必要としていることは万人が認めるところ。しかしその方向性については諸論があがっている。
 租税制度簡素化要求も、連邦政府改革案へのアンチテーゼの一つといえるだろう。元連邦憲法裁判所判事パウル・キルヒホフ(Paul Kirchhof)が提出したコンセプトは、租税体系を抜本的に簡素化し、わずか10分、A4の申告用紙一枚で税務申告手続きが済むというもの。ラインラント・ファルツ州、ザクセン州の各州首相が支持を表明している。彼等は「今日、税法は専門家だけのものになっている。」一般市民には「もはや理解不能だ。」と、現行の税体系を批判している。この批判には、ドイツの税務申告に少しでも関わった人間なら、多くが共感を持つところだろう。一般市民でも確定申告の煩雑さを嫌い、税理士に手続き、納税申告書作成を委託することは、ドイツではけして珍しいことではない。
 簡素化の具体的内容は、まず税率を15から30%とし、年収4万ユーロで最高税率に達する。基礎控除を8000ユーロに、それを超える5000ユーロは40%免税、さらなる5000ユーロは20%が免税となる。一方例外的な控除はほとんど廃止される。例えば通勤控除や日曜・夜間手当への控除は全て廃止される。この簡素化は、一般市民だけでなく、一般商店から大企業までを対象としている。このような簡素化を含め、労働市場や社会システム等を対象とした構造改革を行わないかぎりは、減税による経済波及効果は発揮されないというのが批判者たちの主張だ。
 確かに税制の簡素化は、何時間も税務申告用紙と格闘している一般市民にも、税務申告に少なからぬ費用を要している企業にも、減税と同様の恩恵を与える。投資にともなう税務申告手続きが簡素化されれば、これまで面倒な会計・税務手続きを嫌って投資行動を敬遠してきた自営業者や一般市民の間で、投資意欲を喚起することにもなるかもしれない。ただ心配なのは、この簡素化によってどれくらいの税理士が職を失うかということだ。税制の簡素化は歓迎するところだが、複雑なプロセスで糧を得ていた職種には存立の危機だ。改革に伴う「痛み」は付きものなのか。

「ラスト・ミニット」を販売する旅行センター。
(ベルリン・テーゲル空港にて)
Last Minute(ラスト・ミニット)
(2003年7月14日)

 ヨーロッパは、いよいよバカンスシーズンに入り、空港は保養地で休暇を過ごす人で混雑し始めた。そんな空港の一角に"Last Minute(ラスト・ミニット)"と呼ばれるパッケージツアーを販売する旅行センターがある。ベルリンの表玄関テーゲル空港なら、インフォメーションの奥からエスカレーターで2階に上がった一角に場所を占めている。
 この「ラスト・ミニット」は、名前の通り飛行機(主にチャーター便)の出発直前に販売される格安商品で、多くは売れ残りである。ドイツ人リゾート客に人気の地中海の島々、トルコの海岸地帯、イタリア・フランスの海岸リゾートなどが主な目的地になっている。この格安ツアーを求めるリゾート客は、荷造りをして、パスポート、身分証明書等を持って空港にやってくる。一応、目的地の希望はあるようだが、カウンターでは財布が決定権を握っている。「親子3人、2週間、2000ユーロまででどこかないかしら。トルコの南海岸辺りが良いんだけど」、そんな会話がカウンターを挟んで交わされる。
 ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリア、アジア各国への観光旅行ならもちろん、ハワイやグァムといったリゾートでも、まず目的地ありきの日本人旅行者にはちょっと想像しがたいが、長い休暇を利用して毎年どこかに出かけるドイツ人には、どこへというのはあまり重要でないのだろう。どこへ行ってもやることは同じで、海辺に寝そべって、一日中ごろごろ過ごすのがドイツ人の常だ。そんな姿を見ると「精神のない専門人、心情のない享楽人」なんて言ってみたくもなるが、彼等にとっては余計なお世話に違いない。
 最も安いものでは、トルコへ1週間、4星ホテル、2食付きで一人389ユーロというのもある。ドイツからさらにドイツ人のリゾートへと足を伸ばしてみるのもまた一興か。「毒をくらわば、皿まで」というわけだ。

EU内国際送金で国境廃止
(2003年7月4日)

 2003年7月1日より、EU内の国際送金が、国際口座番号(IBAN)と国際金融機関番号(BIC)の採用により、国内送金並に手続き簡素化された。それに伴い、ドイツでは国際送金(口座振り込み)の手数料が値下げされ、送金に要する時間が短縮された。
 ただしこの措置が適用されるのは、以下の条件を満たす送金に限定される。

・受取り人の国際口座および金融機関番号を明示すること

・ユーロ建て送金であること

・12,500ユーロ以内の送金であること

 つまりユーロ圏での小口送金に国境がなくなったと言うこと。ユーロ圏は、現金だけでなく、金融機関を通じての貨幣流通においても国境の区別がなくなり、市場の更なる一体化が進むと予想される。
 先頃ユーロ採用を見送ったイギリスは、貨幣流通の上でまたも「孤立」を守ったことになる。


ノイハルデンベルク会談
(2003年6月30日)

 週末、ベルリン郊外ノイハルデンベルクで連邦政府閣僚、与野党首脳、各州政府首脳による会談が行われた。その結果、29日(日)、シュレーダー連邦政府首相は、2005年に予定していた租税改革を2004年に前倒しすることを発表した。この租税改革により、所得税負担が平均10%軽減されることになる。連邦政府は、この租税改革によって景気を刺激し、「改革合意2010(Reform-Agenda 2010)」の実現を図る。
 この減税による税収の落ち込みは、各種補助金の削減、ドイツテレコムとドイツポストの政府所有株式の売却、国債によってカバーされる。シュレーダー首相は、この改革が景気を刺激し来年度の経済成長率が2%に達すれば、マーストリヒト条約で定められた債務上限規定をクリアーできるとの見解を表明した。
 「ノイハルデンベルク」は、19世紀の初頭、プロイセン改革を断行した宰相ハルデンベルクにちなむ土地。社会民主党(SPD)と緑の党で構成されるシュレーダー政権は、「減税による景気浮上」という「賭け」に出た。野党キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)は、租税改革の前倒しおよび不足財源の補填方法を批判している。

「エアー・ベルリン」機
「参考資料」参照
ドイツ英国航空(dba)、1ユーロで売却

 6月3日、ドイツ第2位の定期便運行航空会社、ドイツ英国航空(Deutsche BA)が、衣料品販売チェーンのヴェール(Wöhrl)に、対価1ユーロで売却された。
 ドイツ英国航空は、今から10年ほど前に英国航空の子会社として創設され、ルフトハンザ航空によるドイツの空の独占に風穴を開けていたが、長く業績不振に悩んでいた。ドイツ英国航空は、2002年4月に料金を平均で2−3割下げ、格安航空会社の仲間入りをしていたが、業績不振の克服には至らなかった。親会社であった英国航空は、1ユーロという破格値で子会社を譲渡した他、月額300万ユーロにのぼる航空機リース料を1年間に渡って肩代わりする。
 ヴェールは、購入した航空会社の収益性を改善し、採算ラインに乗せることを目標にしており、実現すれば親会社であった英国航空は、2006年6月まで収益の25%を分け与えられることになっている。
 ドイツ英国航空買収に関しては、イギリス格安航空会社のイージージェット・グループが関心を示していた。
 ヨーロッパでの格安航空会社による航空業界再編は、イギリスを中心に進んでいたが、その波はドイツの空にもおよびつつある。

参考資料: ドイツ諸都市を結ぶ格安航空会社
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