社会/環境
化学物質にリーチ 【2004年5月3日】
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 環境問題の古典、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』という本が出版されたのは、1962年であった。カーソンは化学物質の危険性について描き、化学物質が環境と人の健康に影響を与えると警告した。今年は、カーソン没後40年。しかし人類は現在なお、ダイオキシン類など環境ホルモン(内分泌攪乱化学物質)の問題に苦しめられている。

 わが家でも、環境ホルモンがどの程度日常生活に入り込んでいるのか知りたくて、環境ホルモンが含まれている危ないプラスチックを見分けるため、数年前からプラスチックの材質表示番号表を厨房の壁に張り付けている(右図参照)。危ないのは、(3)の塩化ビニルと(6)のポリスチレンなどだ。
 注意しているのは、食料品の包装容器や包装パック、プラスチック製品などの材質だ。ところが、ここベルリンで生活する限り、これまで(3)と(6)の番号に出くわしたことがない。つい最近、ついに(6)と入ったプラスチック包装容器を見つけたと思ったが、これは、日本からいただいたものであった。
 これまでの経験では、日本製品にはサランラップに危ないプラスチックが使用されているものがあるし、材質表示がないものが結構多い。「プラ」とリサイクル表示は強調されているのだが、材質については表示されていないのだ。



 ドイツの役所でダイオキシン類の問題について質問をしても、この問題はもう過去の問題です、と簡単にあしらわれてしまう。BMWの廃車リサイクルセンターを視察した時、実験のため廃車をまるごと焼却したことがあるというので、ダイオキシンはどうでしたかと質問すると、先方はニタッと笑みを浮かべて、「出ませんでした」と答える。そのクールさがやけにしゃくに障ったのだが、ドイツにいたほうが安全だということなのか。もちろん、ドイツでも100%安全とはいえず、稀だが、依然としてダイオキシンが検出されたと報道されることがある。

 ところがだ。ドイツでも、それほど安全ではなさそうなのだ。現在、EUは化学物質の規制改革に取り組んでいるが、その背景を知ると、ぞっーとする。
 EUでは1981年以降、製造ないし輸入される化学物質の届出とデータの提出、安全評価の実施が年間に市場に出る量に応じて規定されている。その数約3700種。これらを新規化学物質と呼んでいる。それに対し、81年前に市場に出てしまっていた化学物質の数は10万種を超える。こちらは既存化学物質と呼ばれるが、既存化学物質は現在使用されている化学物質の約97%を占める。93年に化学物質規制が改革されて、既存化学物質でも年間10トン超市場に出る化学物質については、そのデータの提出が義務付けられた。しかし、ここで主に対象となったのは、使用量の多い140種の化学物質で、そのうち最終的に安全評価が下されたものは30種程度しかない。それ以外の既存化学物質については、データの提出や安全評価も行われないまま使用されており、人や環境に対するリスクが十分認識されていないのだ。つまり、現在使用されている化学物質の大半は安全を確認しないまま、野放し状態で使用されているということだ。

 EUはこの問題を改善するため、化学物質規制の改革に着手し出した。現在それは指令案の形でまとめられており、欧州委員会原案は昨年10月に提示された。指令案は、既存化学物質と新規化学物質の区分を廃止して、年間1トン超製造ないし輸入される化学物質(製造者、輸入者毎)の登録、評価、許可を行う欧州統一システムの構築を規定している。このシステムはREACH(Registration, Evaluation and Autorisation of Chemicals)といわれ、化学物質を登録して、そのデータを管理する中央機関が設置される。これは、化学物質に関するデータを欧州全体で共有しようということでもある。
 改革案は化学物質に関するデータの開示も予定しているが、このシステムで把握される化学物質は約3万種程度に止まる見込み。この改革案は関連業界に負担増を強いることから、今後立法化に向けては、経済優先か安全重視か、その政治判断が重要なポイントとなる。欧州委員会が当初2001年に提案したものに比べると、現行の指令案はかなり経済界寄りの内容となっている。つまり、依然として経済が人と環境に対する安全より優先されているというわけだ。

 カーソンが生きていたら、何というだろう。【fm】

(追記)(3)ないし(6)のプラスチックが包装容器や包装パックに使用されているのを見つけたら、メーカー名と商品名、材質をbmkまで連絡してください。




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