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映画「グッバイ・レーニン!」、日本上陸 【2004年1月17日】
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グッバイ・レーニンポスター
 ドイツ映画といって、何が思い浮かぶだろうか。ドイツ映画は戦前に最盛期を迎えていた。現在も東京のどこかで、「カリガリ博士」や「メトロポリス」などの戦前のドイツ映画が上演されているかもしれない。
 いやドイツ映画は、ファスビンダー監督の「マリア・ブラウンの結婚」やシュレーンドルフ監督の「ブリキの太鼓」などが製作された60年代から70年代が華だった、という人がいるかもしれない。また、ヘルツォーク監督の「フィッツカラルド」などを思い浮かべる人もいるだろう。
 その後、ドイツ映画はどうなってしまったのだろう。もう製作されていなかった、と思っている人がいても不思議ではない。しかし、ここにきて久しぶりのヒット作が登場した。ヴォルフガング・ベッカー監督の「グッバイ・レーニン!」だ。ドイツ国内ではすでに600万人超の入場者を記録、国内の映画賞のほとんどを総嘗めしてしまった。さらに、昨年の欧州最優秀映画賞まで受賞した。


 映画の舞台は、統一前後の東ベルリンだ。東独建国40周年記念の89年10月7日、つまりベルリンの壁が崩壊する直前、母親は路上で偶然に、反体制デモに参加する息子アレックスが逮捕されるのを目撃する。ショックを受けた母親はその場で心筋梗塞を起こし、植物人間となってしまう。しかし、母親は8ヵ月後に奇跡的に目をさましたのだ。
 母親は壁の崩壊はおろか、社会が資本主義化されてしまったことさえ知らない。倒れる前は体制のために精力的に働いてきた母親だけに、現実を知らせてショックを与えては母親の命がどうなるかわからない。そこで、アレックスは自宅のアパートで養生する母親のために、自宅の1室を旧東独時代のままに復活させることにした。しかし、その試みが資本主義化された社会でいかにたいへんか。
 母親はある日、家族の目を盗んで病気後はじめてひとりで下界に出る。その時母親が目にしたのは、ヘリコプターで撤去されるレーニン像であった。
 映画は、東西ドイツ統一に絡んだ物語をコミカルなタッチで描いていく。映画には、旧東独時代のことを知らないと十分に理解できないのではないかと思われ るところがないではない。しかし、あまり知られていない社会主義体制下における一般市民生活の痕跡と、そこから資本主義体制へ移行する社会の変化を映画は十分に垣間見せてくれる。体制が違っても人間の生活があること、人間は体制の弾圧や社会の大きな変化にもかかわらずそれぞれ逞しく生きてきたことが、映画によって思い知らされるのだ。
 人間はとかく閉ざされた、知らない社会に偏見を抱きがちだ。また、辛い過去を体験させられた社会には、心を閉ざしてしまうもの。その心の壁に柔らかく、コミカルに触れることによって門戸を開ける。それがこの映画の味噌ではないか。
 映画が政治的な面を排除していることに対し、批判がないではない。しかしドイツでは、東西を問わず映画にほのぼのとした笑いとノスタルジックな思いを抱いた人が多かったようだ。
 さて、日本ではこの映画はどう受け止められる のか。騙されたと思って、映画館に足を運んでもらいたい。
 なお、東京での一般公開は04年1月末からの予定。字幕スーパーは英語版からのもの。【fm】
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