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【レビュー】『知られざるドイツ (Unbekantes Deutschland)』 【2004年8月1日】
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 ここで紹介するドイツ自動車連盟 (ADAC) 編集の『知られざるドイツ (Unbekantes Deutschland)』は、ありきたりのドイツ像に飽き足らないbmkサイトの読者にお勧めしたい一冊。(1)
 書名の通り、この書には日本や諸外国からの旅行者が手にするガイドブックには掲載されることのない観光スポットが150のモデルコースに分けられて満載されている。その数、2000ヶ所。いずれも地元に詳しい人が選んだもので、国際的には無名の古城や修道院、地元民のお気に入りの景勝地などさまざま。モデルコースのほとんどは、自動車を使い1、2日で回れるように組まれている。
 評者は、超有名観光地に殺到する日本人旅行者にこそ勧めたいが、編集者の意図はドイツ人向けであろう。背景には最近ドイツ人観光客の目が国内に向いているということがあるかもしれない。ドイツ人の旅行といえば、1、2週間の地中海の島々へのパッケージ旅行が思い浮かぶが、そのような「マス・ツーリズム」は一部ではすでに飽きられているということも報じられ、テロや伝染病もその傾向に拍車をかけている。ドイツ人の旅行も過渡期にさしかかっている。


 ドイツ人はアメリカ人や日本人と並んで旅行好きの国民として知られるが、今日のような旅行をするようになったのは、いつからだろう。おそらくブルジョアの間では19世紀の末、庶民の間での大衆旅行はナチス期に萌芽し、戦後に一般化したと考えられる。19世紀の末にドイツを訪れた森鴎外もドイツ人の旅行について言及している。彼が交流のあるドイツ人に、なぜ遠くにばかり旅行に行くのかと尋ねたところ、周りが行くので街に残っているのは体裁が悪いとの答えが返って来たとのこと。鴎外は『ドイツ日記』の中に、「オットー・ロケット、画工のいたずらに遠遊に耽り、四辺の好景を顧みざるを笑いたりき。あに画工のみならんや」と書いている。ドイツ語で「さっぱりわからない」「チンプンカンプンだ」というのを「駅しかわからない (Ich verstehe nur Bahnhof)」というらしいが、そんな言葉ができたのも、ドイツ人が旅行先についての十分な知識もないまま、遠いところにばかり行くようになった頃だろう。(2)
 『知られざるドイツ』、風流を求めてドイツの「四辺の好景」を顧みようという、旅なれた日本人旅行者にもお勧めしたい。【長嶋】


注:
(1) Unbekanntes Deutschland, 2000 Entdeckungen entlang der schönsten Nebenstraßen. München 2001. ISBN: 3-8264-0901-9
(2) この用法の起源は明らかでないが、20年代、特にベルリンで流行した (Duden 11 - Redewendungen und sprichwörtliche Redensarten)。
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