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草の根運動で復活した大麻製品 【2004年2月8日】
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クロイツベルクの大麻製品店

ベルリン・クロイツベルク区にあるハンフハウス

 大麻といえば、すぐに麻薬と思うのが普通であろう。それに対して、大麻の種や繊維が昔から貴重な衣料品や食品の原料、薬草として使われていたのは、あまり知られていない。中国では、大麻の歴史は4000年以上も前に遡る。ドイツで一番古い大麻の記録は紀元前800年から400年頃に見られ、大麻製の衣料が使われていた記録があるという。中世では大麻の種は貴重な食料品となっていたほか、16世紀の薬草辞典には大麻は重要な薬草だと記されている。ドイツで大麻栽培がピークを迎えるのは17世紀で、栽培面積は15万ヘクタールにも及んだ。しかし、18〜19世紀に綿の到来で国内栽培は激減する。その後、大麻は2つの世界大戦中に国内で生産できる貴重な繊維源として再び注目されたものの、戦後アメリカが麻薬栽培を厳しく取り締まった影響で、ドイツでもほとんど大麻は栽培されなくなった。1982年には麻酔剤法が改正されて、一部の例外を除いて大麻栽培は禁止されてしまった。


 大麻で問題となるのは、大麻の花に含まれているTHC(Tetrahydrocannabinol)。これが麻薬の源となる。しかし、大麻にはたくさんの種類があり、THCをほとんど含まない大麻の栽培はEU域内でも許可されている。現在、大麻はバイオマスなどの自然エネルギー源としても注目されており、大麻繊維を使用した製品開発も盛んに行われている。ヨーロッパで大麻栽培の中心となるのはスペインやフランス、東欧諸国などだが、EUは大麻栽培に対して補助金さえ給付している。また、大麻製品は輸入対象品目を挙げる日本の実行関税率表にも載っており、大麻の繊維や大麻の種、エキスなどは日本へ輸入することもできる。
 ところでこの大麻、ドイツで静かに復活してきているのだ。そのきっかけをつくったのは、ベルリン在住のジャーナリスト、マティアス・ブレッカーさんだ。ブレッカーさんが出版した大麻の歴史に関する翻訳本に大麻製の紙を使用したばっかりに、それをきっかに大麻製の紙がほしいという問い合わせが殺到。ブレッカーさんは思いもよらずハンフハウス(ハンフは大麻の意)という会社まで設立してその需要を満たす羽目になった。ブレッカーさんらはドイツの伝統である大麻栽培を復活させるため、裁判所に異議を申し立てたり、国会に陳情するなどの運動を続け、96年春にはTHCの少ない大麻の栽培を認める改正案が国会を通過、ドイツ国内で大麻栽培を再開する道が開かれた。
 法律の改正とともにドイツでも大麻を栽培したいとする農民は急激に増加し、大麻の栽培面積は96年に1400ヘクタール、97年に2800ヘクタールと劇的に拡大していった。大麻のいいところは、気候の変化に強く、成長が早く、肥料もいらないということ。4月に植えた大麻は3〜4ケ月で4〜5メートルにまで成長し、その間手入れはほとんど必要ない。
 問題は、大麻を使った製品の製造ノウハウである。大麻栽培の伝統を失ったドイツには、もうそのノウハウはない。資本力のないブレッカーさんらは銀行からの融資も受けられず、一般公募によって市民から資金を集め、95年には大麻基金を設置するまでに漕ぎ着けた。こうして集められた資金は大麻製品の技術開発や大麻加工工場の設置などに当てられた。つまり、草の根運動によって大麻製品が復活したのだ。
 現在、大麻製品を販売するハンフハウスはベルリンを中心にフランクフルト、デュッセルドルフ、ハイデルベルクなど12都市、14ヵ所に及ぶ。ドイツ以外では、スイス、デンマーク、フィンランド、ノルウェーに出店している。 
 大麻を使った商品は多種多様だ。ジーンズやシャツ、セーター、下着などの衣料品、鞄やポシェット、財布、ベルトなどのアクセサリー、シャンプー、石鹸、ナイトクリームなどの手入れ用品、香水などの嗜好品。さらに、大麻の布地を張り地とした椅子や大麻繊維を詰め物としたマットレス、油やビール、レモナード、チョコレート、パン、ミュースリ、パスタなどの食品などもある。特に、大麻の種から採れる油には皮膚病に効用のあるガンマリノール酸が含まれており、医薬的効果も高いという。また、大麻繊維は建物の断熱材としてばかりでなく、自動車用の断熱材としても使用することができる。
 大麻製品のパイオニアとなったブレッカーさんらだが、ブレッカーさんらが設立した会社はもう存在しない。大麻製品がビジネスとなることがわかったので、自然素材を売り物にする衣料品大手メーカーなどが大麻製品市場に進出してきたのだ。資本力のないブレッカーさんらにはもう対抗のしようがない。店鋪としてのハンフハウスはフランチャイズ方式で残ったものの、ブレッカーさんらが設立した会社やブレッカーさんらが自力で開発した大麻製品の製造ノウハウは、大手メーカーなどに吸収されてしまった。
 現在大麻製品は地道に広がり、自然素材としてはなくてはならない存在にまで成長した。その意味で、ブレッカーさんらが草の根ではじめたルネッサンス的な運動はその意味を失い、大麻製品は製品としてノーマル化してしまったといえよう。ブレッカーさんが「私たちのビジネスが成功すれば、もう私たちの会社は生きていけないでしょうね。それはそれでしようがありません」とあきらめ顔を見せていたのを思い出す。ブレッカーさん自身が予想もしなかった成功が、逆にブレッカーさんらの首を絞めるという皮肉な運命になったのだ。しかし、ブレッカーさんらの蒔いた種は自然製品愛好家の意識を刺激して、静かな自然製品ブームとして結実しているのも事実。現在も、毎年8月にはベルリンのアレキサンダー広場で大麻パレードが開催されている。【fm】


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