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「オープンクラス」運営でのイノベーション 【2007年3月14日】

 昨年よりダンスを習い始めた。ステップはちっとも上達しないが、ダンス業界へのアンテナは少し開発されてきたようだ。最近、なるほどドイツらしいなというイノベーションをそこで「発見」した。
 ダンスといっても私が習ってきたのはサルサというラテンダンスの一種なのだが、このダンスに限らず、ダンスのレッスンには三種類あるのがわかってきた。まずは大きく分けてグループレッスンと個人レッスンがある。この二つの違いは説明するまでもないだろう。どうしてもわからないという方は、周防監督の映画『Shall we ダンス?』をご覧あれ。
 そしてグループレッスンは、さらにクローズドコースとオープンクラスに分かれる。前者は、例えば三ヶ月といった期間と参加者をあらかじめ決めて、その期間内に特定の、そのクラスのレベルにあったステップ/フィガー/コンビネーションが教授されるというもの。それに対し後者は、期間や参加者を決めずに毎回違う参加者で違うステップ/フィガー/コンビネーションをレッスンするもののこと。それぞれに長所短所があるが、クローズドコースはダンススクールのレッスンに多く、オープンクラスはクラブでのレッスンといった、だれが来るのか特定しない方が良い場合に多く採用される。

 ここで紹介する「イノベーション」はこのオープンクラスでのもの。私がサルサダンスを習っているのは、クラブではなくWalzerlinksgestrickt(ヴァルツァーリンクスゲシュトリクト)という普通の社交ダンススクールの一角なのだが、そこでは土曜日にサルサのオープンクラスが開催されている。
 13時から17時まで、1時間ごとにレベルが分かれている(レベル1〜4)のだが、画期的なのはレベル2以上ではそれぞれのステップ/フィガー/コンビネーションに特定の名前がつけられ、それがパンフレットやサイトで公開されおり、その表示の順番通り繰り返されているということ(レベル1はベイシックと最も簡単なターンなので名前を付ける必要がない)(参考:サルサオープンクラス>enter)。
 しかしサルサを踊らない人には、これがなぜ画期的なのか理解するのは難しいだろうから、以下で解説したい。

 サルサというダンスは、キューバのダンス(ソン)をベースに様々な音楽やダンスの要素を混ぜて20世紀の後半になってから成立したものなのだが(「サルサ」(=ソース)と呼ばれるのはそのため)、ダンス自体の歴史もその商業化の歴史も社交ダンスに比べて短く、規格化/標準化されていない部分が多い。それは、ダンサー、インストラクターのだれものが自分なりの新ステップ、新コンビネーションを開発できるということで、サルサにダイナミズムを与え、それこそがサルサの魅力でもあるのだが、そうするとサルサ業界には困ったことも起きる。
 それは、その日何を教えるのかステップ等の名称を示して提示することができないという混乱。ステップ、コンビネーション等に名前がついていないことも多いし、ついていても皆違った名前で呼んでいて、名前を聞いて知らないステップだと思ったら、実は違った名前ですでに知っていて、習いに行ってみたら、おなじみのものだったということもあり得る。
 そんなこともあって、何を教えるとアナウンスすることで混乱が生じるのを避けるためか、あるいは別の理由からか、今日は何をやると明示しているスクール、インストラクターはドイツにも日本にもなかったのだ(少なくとも私の管見の限り)。
 明示を避ける理由としては他にも、サルサレッスンは、そのコラソン(心)を教えるところだから、自分たちの教えるステップやコンビネーションに名前を付けて切り売りするのを嫌ったということもあるだろう。あるいはコンビネーション自体がダンサーの自由な発想にまかされているので、教えられるコンビネーションはその一例に過ぎず、どうやって個々のステップを組み合わせるかなんて本当は決まっていないということも、名前がなく、したがってそれを明示できないという理由だろう。
 だからと言って名前を付けないとどうなるのか。ベルリンの例で言えばサルサクラブでのオープンクラスは、レベルは分かれているものの、どれも参加してみなければ、その日何を習うかわからない。だからオープンクラスに出て上達して上のクラスに行こうと思ったら、何度も同じレベルのレッスンに出てみて、前に習ったものばかりになってきたなと感じたら、そのクラスは終わりにして、次からは上のレベルのクラスに参加するというようにするしかない。あるいは、インストラクターが、「アラビアンナイト」のごとく毎回違ったステップの組み合わせを提示することができるなら、いつまでたっても同じクラスで、限りない組み合わせを習い続けるということにもなってしまい、教わる方としては自分の進歩の度合いも分からず、教わる効率も悪い。
 したがって、名前のついていないもの、規格化されていないものに、でたらめでも敢えて名前を付けたメニューにしてしまった上記のオープンクラスは、かなりのイノベーションだったと言える。これによって習う方は、オープンクラスでも、自分の知らない、できていないものだけを選択的に習うことができるようになった。今週のレベル2のステップはもう習得したから、今日はレベル3のコンビネーションのレッスンに参加してみようといった具合に。

 しかし疑問もある。習う方がこのように合理的に選択できるようになった結果、そのレッスンに払う費用も節減されてしまうわけだから、クラスを運営するスクール、インストラクターにとって得になるのか、逆に損してしまうのではないか、という疑問。
 私の通っているスクールの場合、それは杞憂だった。合理的なシステムは、習う方に受け入れられ、サルサオープンクラスの生徒は増える傾向にある。スクールは、現状のレベル分けによる収益が頭打ちになったと感じれば、すでに全て習得してしまった生徒のために、さらに上のレベルを設置すれば良いだけの話だ。
 この方式、うまくいっているようで、サルサだけでなくディスコフォックスという種類のダンスのオープンクラスにもこの方式が採用されることになった。

 結論としてこんなことが言えるのではないか。分けること、そしてそれに名前を付けるということは、これぞまさしく分析と定義! 分け、名前がついたことで、今まで一続きでとらえどころがなかったものが、部分ごとに論じることができるようになった。
 この分析を可能にすることこそ、近代の産物なのだが、ダンスにまでそれを応用したこの手法、まさにドイツっぽいやり方だ。「Made in Germany」ここにあり! 【長嶋】


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