旅人たち

対談(2003年10月):Mitfahrt(相乗り)の旅

Mitfahrzentrale

「相乗り」仲介所(ツォー駅)

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Kölner Dom

ケルンのスカイライン

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BMK: 最近ちょっと変わった方法でケルンへ旅行したということですが、どのような方法か聞かせて下さい。

中村:はい。行きは飛行機を使って時間を節約したので、帰りはお金を節約しようと、Mitfahrt(相乗り)でベルリンまで帰ってきました。これはドイツで始めて知ったシステムで、他の国については知りませんが、こんなものがドイツにあるとは私も日本にいたときは知りませんでした。日本のガイドブックで紹介されているのを見たことはありませんから。

BMK:それなら私も聞いたことがあります。しかしそれは、いわゆる「ヒッチハイク」とは、どこが違うのですか。

中村:ヒッチハイクの経験は数えるほどしかありませんが、ヒッチハイクをしようと大きな通りに立っていても、数時間待ってつかまるかどうかは保証の限りではないですよね。それに危険な目に遭う可能性もなくはない。Mitfahrtはもっと組織化されたシステムです。「ミットファールツェントラーレ(Mitfahrzentrale)」というのが一番有名ですが、ドイツにはある程度大きな街になるとたいてい同乗(Mitfahrt)を斡旋してくれる会社があるんです。「相乗りセンター」とでも訳すのでしょうか。ベルリンだと、ツォー(Zoo)駅とアレクサンダー広場にその事務所があります。

BMK:安全と確実性を保障してくれるシステムとはどういうことですか。

中村:まず行き先と日時が決まったら、最寄のMitfahrzentraleに行って、「この日にこの街に行きたいのだけど、ちょうどいいMitfahrtはありますか?」と言って問い合わせます。もちろん電話でもできますし、ネットで調べることも可能です(http://www.mitfahrzentrale.de)。そこで都合よく相乗りの車が見つかったら、係りの人がその車の持ち主に電話で問い合わせてくれ、待ち合わせ場所などを確認します。これで大体終わりです。確認書には、日時や相手の名前、電話番号の他、待ち合わせの時に困らないよう相手の車の車種、色、ナンバーなども記載されていますから、悪いことはなかなかできないようになっています。最後に仲介料を払い、車の乗車代は運転手に直接払います。先日のケルンの場合は、仲介料が9.2ユーロ、乗車代が18.5ユーロでした。

BMK:なるほど誰が誰の車に乗っているのかがわかっていれば安心ですね。そういうので犯罪が起こったというのは、報道でも聞いたことがありません。でも値段がそんなにやすいとは知りませんでした。ところでケルンからベルリンですと、アウトバーンを通っても6時間くらいはかかりますか。その間、車内はどんな感じなのですか。

中村:私はケルンへの往復に2回ほどMitfahrtを使ったことがあります。1回目はベルリン発が夜の23時という夜行便で、同乗者は私一人だけでした。Mitfahrtは基本的に相手の都合に合わせるために、このような中途半端な時間帯になってしまうこともあります。運転手は土木関係の方だったように思いますが、割と無口な人で、私も眠かったので、ケルンまでの約6時間はほとんど寝て過ごしました。気付いたらケルンに着いていたという感じでした。

今回、ケルンからベルリンへ帰るときは同乗者が運転手も含めて3人。運転手はエンジニアの仕事をしているというドイツ人、他の同乗者はアラブ系の人と、モンゴル人、そして日本人の私と非常に国際色豊かでしたね。私は隣のモンゴル人とドイツ語でいろいろな会話をしました。モンゴル人の朝青龍が横綱ということで、大相撲の話題で盛り上がりました。その間、トイレ休憩が2回。眠くなったら寝ればいいわけですし、ベルリンまでの6時間はそれほどきつくはありませんでした。

BMK:いろいろあるようですね。場合にもよりますが、ドイツ語を勉強している人には、良い会話の練習になりますね。Mitfahrtで知り合って、その後、交流が続くということもあるのでしょうか。

中村:そのようなこともないとはいえません。今回の運転手は仕事の傍らアマチュアの合唱団で活動していて、私がフルートを吹くのを楽しみとしていると言ったところ、よかったら12月のコンサートにゲストとして出演してくれないかと依頼されました。

ドイツ語が全くできないと車中での会話に困ることも確かにあるでしょうが、Mitfahrtを最初に申し込むときに、運転手は何語ができるかということがわかりますし、ドイツ人は英語が堪能な人も多いですからね。あまり心配する必要はないように思います。

BMK:英語ができれば、日本からの旅行者でも利用できますね。安さと出会いが魅力のMitfahrtですが、中村君はこれからもMitfahrtで旅行しようと思いますか。今後の旅行の計画などありましたら教えて下さい。

中村:ドイツは鉄道運賃が高めですし、バスが通っている路線も限られている。となるとMitfahrtはなかなか有効な移動手段だと思うのですが、いかがでしょうか。短い期間の間に効率よくいろいろな所を巡る、というような旅行には適しませんが、ある程度時間に余裕があって、英語やドイツ語での会話がそれほど苦ではないという旅行者の方には、一度チャレンジされることをおすすめします。私自身の今後の旅行予定は、まだ決まっていませんが、ぜひまたMitfahrtをうまく取り入れた旅をしたいと思っています。

旅人:中村真人くん

大学での研究のかたわら、ベルリン日本語補習授業校で教鞭をとる。ヨーロッパ旅行の達人。

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