会場を後にして
近代以前、戦争は主要な文化交流の経路だった。戦争によって古代エジプトに戦車が伝わり、オスマントルコとハプスブルク帝国の戦いではヨーロッパにコーヒーが伝わり、コーヒーショップの文化が花開いた。従軍した兵士が進軍先で異国の文物にふれたことも、捕虜が料理や工芸を伝えたこともあっただろう。近代においてもドイツ人捕虜を通して日本にバームクーヘンが伝わったということを聞いたことがある。もちろん幸福な伝わり方ばかりではなかったのだろうが。
現代においては外国の文化はどう伝わっているだろうか。教養人なら外国語で書かれ、あるいは翻訳された書籍を通じてということも、もちろんある。しかし一般には、貿易によってもたらされた商品、あるいは旅行先で見、体験した文物を通じてというのが主流ではないだろうか。そのように考えると輸出入や旅行業に携わるものにも見識とモラルが求められる。営利追求のための活動においても、誤解を助長することなく、文化の相互理解に貢献するような経済活動を期待したい。【長嶋】
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