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ドイツのキャベツ:ヴァイスコール【2004年8月21日】
Weisskohl
スーパーに並んだ「キャベツ」
 ドイツの国土は、日本のそれに比べると大分北に位置している。例えば首都のベルリンは緯度でいえば樺太の中程に位置する。それでも気候が温帯に属するのは、北大西洋を流れる暖流、北大西洋沿岸流の影響が大きい。この海流が暖かい風を運んで来るために、ドイツの気候は寒冷とはいえ、北海道の北部や樺太ほどには寒くはならない。
 したがってできる農作物も、米を除けば日本で穫れるもののほとんどはドイツでも穫れる。そしてヨーロッパ各地やアフリカからも野菜が輸入されるために、ドイツのスーパーの野菜コーナーは、日本のそれと区別がつきにくいほど。さらに、ヨーロッパ人の食への関心がアジアに向いているとなれば、最近ではアジア的な野菜も多くはドイツのスーパーで入手できるようになった。あるいは全く同じでなくとも等価物は手に入り、日本で通常食べていた料理をするのには、そう困難はない。
 アジア的な野菜としては、サヤエンドウ、モヤシ、長ネギ、椎茸などがある。サヤエンドウはアフリカから、椎茸はスペインから、モヤシはオランダから輸入されているようだ。これらは、最近はアジアショップでなくとも普通のスーパーでも入手できることが多い。長ネギなどは、私が住み始めて以来、6年の間に大分普及している。気候のせいか、栽培技術が未熟なせいか、長ネギとはいっても先がタマネギのように丸まっているものがあって驚かされることがあるのだが。
 等価物としては、ピーマンの代わりのパプリカ、そしてタイトルに挙げた、キャペツ代わりのヴァイスコールなどが思いつく。パプリカは、ピーマンに比べると苦みに乏しいが歯ごたえなどはピーマンの代用品として十分通用する。さてヴァイスコールだが、これも・・といいたいところだが、こればかりは扱いに困る。色といい、大きさといい、日本のキャベツそのままなのだが、店頭で手に取るとその違いは歴然としている。はじめて持ってみるとその重さに驚く。まるでボーリングのボールのようなずっしりとした重み。それもそのはずで、中身は、身がぎっしりと詰まっていて、半分に切るのにもナイフの刃が、文字通り「歯が立たない」こともある。料理もまた一苦労。トンカツの付け合わせのように細かくきっても、これが固くてやはり歯が立たない。炒めても、ちょっとやそっとでは柔らかくはならない。私は、野菜炒めに使うのを諦めてしまった。
 このドイツ製「キャベツ」、ザウアークラウトといって塩漬けにして発酵させるか、鍋料理に使うことが多く、日本のように生で食べたり、軽く炒めて食べるということはないようだ。素材が先で料理法が決まったのか、料理法があってそれに合う素材が好まれたのかは、卵が先か鶏が先かと同様にわからないが、この素材と料理法の閉ざされた循環の中からは、日本で一般的な柔らかキャベツは出て来ない。
 炒めるとしっとりと柔らかくなり、甘みのあるキャベツ。そんなキャベツを、私は食べたい。【長嶋】


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フリーランスのリサーチャー、翻訳者、通訳者
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