SWTとは?
 シェーネス・ヴォッヘンエンデ・チケット(Schönes-Wochenende-Ticket)、略してSWT。直訳すれば「麗しき週末切符」だろうか。それよりは「ナイス・ウィークエンド・パス」なんて訳した方が、日本のとくとく切符にも類似商品を見つけやすそうだが、この切符はドイツ鉄道が販売している企画切符で、利用条件は以下の通り:
・週末の土曜あるいは日曜どちらか1日有効(翌日3時まで)
・個人ないし5人までのグループ旅行に有効(ただし両親が自分の子供を、あるいは祖父母がその孫を連れるときには、14歳までに限っては好きなだけの同行が認められる)
・ローカル列車のみ有効(急行以上は利用不可)
(※詳しくはDBのホームページ:www.bahn.deを参照)

 日本では、週末版青春18切符といったところだろうか。全国どこまでもローカル列車に乗れるというのは、日本の青春18切符と同様だが、大きく違うのは価格の安さだろうか。駅の切符売り場で購入すれば30、インターネットや自販機で購入すると28ユーロは、複数で旅行することを考えると非常に安い。日本円に換算すると4000円を少し上回るくらいだろうか。それでもこの切符、一頃に比べると大分値上がりしている。利用条件も変わっているが、確か5年前には2人で週末2日間有効で35マルクだった。日本円にすれば2500円程度。これはさすがに安すぎ、週末の近距離列車が異様に混雑するようになり、ドイツ鉄道も価格を適正化したようだ。
 さてこの切符でどれくらいの旅ができるのか。試しにハンブルクからミュンヘンへとドイツ縦断の旅が、週末の1日でできるのかをドイツ鉄道のサイトで調べてみる。2月29日で検索してみると組み合わせは12件もある。おそらくドイツのすみからすみまで、ほとんどがこの切符でだけで旅行できるだろう。これはドイツの国土が日本と違って東西南北に長くはないということに起因するが、現在のドイツがどれほどまとまりが良いかよくわかる。ちなみにドイツと日本の面積を比べると日本の方が少しだけ大きい。
 この切符、老若男女を問わずドイツ人の愛用者も多いが、やはり学生や若者がよく利用しているようだ。グループ5人まで有効ということから、それ以下のグループでローカル列車に乗っていると、切符なしで乗り込んできた若者に、SWTをもってるならちょっと一緒に連れてってくれよと頼まれることもよくあり、思わぬ道連れができることしばしば。
 日本からのバックパッカーは、ヨーロッパやドイツ国内有効のパスを使って、新幹線列車や特急・急行と贅沢な旅をするので有名だが、日本からの留学生はかなりこの切符を利用しているようだ。豊かな国からそれも留学する余裕のある学生がどうして倹約するのかといぶかる向きもあるだろうが、アルバイトの機会もなく、異国に限られた予算で生活するとなれば、相対的には金持ちでもつい倹約したくなるというのが人情というもの。またドイツ人学生の、吝嗇とも見える倹約ぶりを見れば、贅沢な旅行を後ろめたく感ずるのも当然かもしれない。
 日本の旅行ガイドで紹介されているかどうか定かではないが、時間と気持ちに余裕のある旅行者にはお勧めだ。【2004年2月24日】【長嶋】