ドイツ
インターナショナル・グリューネ・ヴォッヘ【2004 年2月4日】
農産物・食物の国際見本市 IGW レポート
ベルリンメッセ会場 【ベルリンメッセ会場】  アメリカでの狂牛病 (BSE) 問題、アジアでの鶏インフルエンザと、何かと家畜・家禽に関する病気が世界を騒がせている。これらは、飽食の国々へも食糧問題を突きつけており、21世紀 的な問題と言えるだろう。
 狂牛病といえばヨーロッパが本家だが、ドイツの食卓は安全なのだろうか。1月22日(木)、bmk は、ベルリンメッセ会場で開催されていた農産物・食料品の国際見本市「インターナショナル・グリューネ・ヴォッヘ(国際緑色週間)」を訪問した。そのときの模様をレポートする。

ドイツ各州のブース
ドイツソーセージ ドイツスタンド Wurst
 最初に訪れたのはドイツ各州のブース。各州ともビールや加工食品などドイツのお国自慢の様相を呈している。各州、嗜好を凝らした展示だが、異邦人には ソーセージなどはどこも似たり寄ったりという感じ。あるいはこれがドイツの共通性なのか。
 ワインの展示もあるが、ドイツのワインは生産コストが高く、どうしても南欧産のものに押され気味。

農業関連商品
EU菜種油 農村での休暇
 この見本市は、農業生産物・食料品ばかりでなく、農村や栽培に関連した展示も行われている。写真左は菜種油。菜種油は食用の他に、バイオディーゼルの原料にもなり、環境に優しい自動車燃料としても期待されており、栽培には補助金も支給される。農産物もここまで来ると工業製品との境目があやふやになる。ちなみに食用油もほとんどそのままバイオディーゼル用自動車の燃料になるとか。通常のディーゼル車と違うのは、燃焼室内の着火のタイミングで、それさえ調整すればほとんど問題がないということ。ガス欠のときに給油所ではなくスーパーに寄るということも可能なのか。
 写真右は、ザクセン州の農村での休暇を宣伝するブース。農村を介してツーリズムも展示の対象となっている。bmkメンバーの1人は、格安な乗馬コースを見つけた。
 この他にも園芸やペットの展示もある。

食糧の安全と農業政策
牛肉、BSE問題 ドイツ政治漫談 遺伝子操作反対
 安全な食糧の供給は、ドイツの重要課題であるばかりでな く、今や世界の問題となっている。ドイツでも狂牛病の存在が発覚し、一時市場はパニック状態にもなったが、今はひとまず鎮静化したようだ。
 家畜へタンパク質を与えるために、同類の骨や肉を粉末としたものを飼料に混ぜたことが、BSE発生の原因だということになっているが、それが人間をも蝕み、農業経営に損害を与える様は、共食いを強要された家畜の恨みにも思える。
 BSEばかりでなく、先進工業国の常として、食料品が必ずしも安全とは言えないドイツでは、BIOへの関心も高い(ドイツ語ではバイオではなくビオ)。ドイツ人の間では日本の食品、料理には、そのBIOや健康が期待されている。BIOショップでは、漢字やヨガなどの東洋をイメージした商品展示を良く目にする。
 写真中央は、農業政策をテーマとした政治漫談。舞台の上では熱弁が振るわれているが、聴衆はあまり耳を貸していないようだ(写真をクリック!)。この場所は正面玄関から入りそこから出るという一周のコースをとって展示を見学するとちょうど真ん中。多くの人が休憩所として利用していたようだ。笑いが取れなくて残念でした。ドイツにはカバレーと呼ばれる寄席の伝統があり、政治ネタはお得意。
 写真右は、遺伝子組み換え作物に反対する展示。狂牛病のような危険が植物性食品で起こらないとは誰も断言できない。

EU 新加盟諸国のブース
トカイワイン チェコスタンド
 今年5月、EU は、東方に領域を広めるが、それらの中には西欧諸国への農産物輸出に積極的な国も多い。中でもハンガリーはその中核と言える。日本での知名度は今ひとつだが、トカイワインは知る人ぞ知る貴腐ワインの雄。甘く芳醇な味わいは癖になる。ドイツでは安いもので、8ユーロ程度。日本でのワインの値段になれてしまうとこの1000円程度の値段は、非常に安い部類に属するかもしれない。しかしドイツでは、安いものでこの値段ということは、結構な高級品。ドイツワインの日本での価格をみると、現地の10倍にもなっていることがある。とすると8ユーロは、日本では1万円にも相当するのか。
 実はこのワイン、社会主義時代から日本にも輸出されており、東欧の名品ショップ(確か銀座にあった)や一部のデパートで私は見かけたことがあった。値段は1500円程度で、ドイツで今購入するのとそれほど変わりはなかった。今もどこかで売られているだろうか。
 ハンガリーのブース(写真左)にひまわりが飾られているが、ひまわりも採油植物として有望。以前見たハンガリーのひまわり畑を思い出す。
 写真右はチェコのブース、同じ旧東欧(今や中欧か?)でもハンガリーとはイメージが大分違う。ハンガリーは主にマジャール人の国、チェコ、ポーランドはスラブ人。食にも民族性の違いが現れる。

【関連記事】ドイツから中東欧へ

「食」で世界旅行
ネパールの紅茶  今年のグリューネ・ヴォッへ、やはりヨーロッパ各地からの出展が多かったが、もちろん出展者は世界中に広がっている。アフリカはあまり見かけなかった が、中近東や東アジア、アメリカからの展示もある。しかしやはり各国で展示にも色が出るようだ。中国(人)の展示は、展示というよりも、軽食の販売が中心で、焼きそば等のスタンドを多く見かけた。ドイツとのつながりなのか、イスラエルからの展示も多く、この国も試食兼販売のブースが多い。食欲をそそるものも見かけた。イスラエルは、パレスティナ、アラブ諸国との問題を抱えるが、今もロシア、東欧などからの移民が続いている。各地の食文化も融合していることだろう。
 bmkは、ネパールからのブースで、紅茶を購入(写真)。袋入りで2ユーロあまりだったが、非常に香しい。この見本市は、食感の世界旅行でもある。

西欧の農業大国−フランス
フランスブース(ワイン)  西欧の農業大国と言えばフランス。多くの農産物、食料品を輸出している国だけあって展示も大規模。ホール1つを8割ほど使っていただろうか。展示品は、主にワイン。展示品は多いが各ブースとも活気がないように感じられたが気のせいだろうか。まるであえて売り込む必要もないといった感じだ。

「頑張れニッポン」
日本ブース choya梅酒
 「頑張れニッポン」、スポーツ競技ではないが、そう叫びたくなるのが日本のコーナー。出展数も少なく、それも現地のショップ、企業がほとんど。展示品 も、お茶は良いとして、左の写真のように香辛料を並べたブースまで。日本が香辛料の国だとは初めて知りました。カレー粉のにおいで、南アジア的な雰囲気が漂うが、こういう文化的な誤解は日常茶飯事。【関連記事】
 その中で一つだけ健闘していたのが、梅酒メーカーの「チョーヤ」。写真右はその展示品で、梅酒ゼクト(ゼクトは発泡性ワインで、いわゆるシャンパン)。試飲させてもらったがさっぱりした飲み口で、なかなかいける。ドイツの誇る「赤ずきん」にももちろん負けない。【関連記事】

会場を後にして
 この見本市(グリューネ・ヴォッヘ)には、もう何度か来たことがあるが、いつも驚かされるのは、その訪問者数の多いことだ。ベルリンのメッセ会場をほぼ 全て使ってもかなりの混雑で、ホールからホールへの通路はしばしば人で埋まって動けなくなることもある。
 このような国際見本市を、ドイツ語ではメッセと言い、英語ではフェアと言う。ヨーロッパでは教会の縁日と結びついた「年市 Messe」が語源であり、サンプル取引が行われるという点では、幾分かはその伝統をひいている。これに対しアメリカに起源を持ち、日本語で「共進会、品評会」と訳されるフェアの要素も今日のメッセは持っている。今回レポートしたグリューネ・ヴォッヘは、幾分後者の要素が強いだろうか。少なくとも一般の訪問者にはそのようだ。
 食と言えば、人間の生存に最も基本的なもの。そして農産物、食糧は、最も古い商品の一つだろう。今日のメッセからイメージする技術や流行の最先端商品と は、大分異なるが、これもまた永遠の商品であり、ここにも流行り廃りがあるようだ。

 このグリューネ・ヴォッヘが始まるとベルリンでは冬物一掃セールが行われ、ベルリン映画祭も間近に迫る。【長嶋】

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